第38回 鉄蓋大好き!

下水道管の“勤続年数”が分かるマンホール蓋

傭兵鉄子 TETSUKO YOHEI

私たちの生活を支えている下水道はとても身近な存在ですが、地面の下にあるので、下水管路の状態を見たり、いつ設置されたのかを知る機会は工事の時くらいしかありません。ですが、東京都のマンホール蓋には、工事の後でも管路が設置された年が分かる蓋があります。

23区のマンホール蓋(写真A)や、一部のコンクリート製のマンホール蓋には、「人孔番号」という管理番号が入っているものがあり、蓋の設置位置や繋がっている下水管路の種別と設置年度が分かるようになっています。人孔番号は、蓋の中央部にはめ込まれた「人孔鉄蓋管きょ布設年号表示用キャップ」という4つの文字キャップに記されていて、向かって左から1つ目が人孔番号(下水道台帳から付番)と、繋がっている下水管路の種別(黄色:合流管・汚水管、青色:雨水管)、2つ目と3つ目は蓋の識別番号、4つ目は下水管路の設置年度(西暦の下2桁/黄色:1990年代、青色:2000年代)を示しています(写真B)。

人孔番号は「下水道台帳」という下水道局が管理する下水道管の埋設状況を記した図面で把握されていて、工事のほか、がたつきや臭いなどの不具合が出た際に、番号から蓋の場所を絞り込むことができます。管路と蓋に合わせて区画ごとに数字や色が変わるので、人孔番号入りの蓋は、実はその場所にしかないレアな蓋といえるのかもしれません。

私がいつも注目するのは、左から4つ目の設置年度の部分です。黄色と青色で年代が変わるので、キャップの数字や色を見て下水道管の“勤続年数”を知り、「この下にある下水道管は勤続〇〇年のベテランさんなのですね。お疲れさまです、これからも頑張ってください!」とか、「青色に24だから、今年(2024年)設置された新人さんですか。これから何十年とお世話になります!」と心の中で話しかけたりしています。

人孔番号に書かれているのはあくまでも管路の設置年度で、蓋を設置した年ではありません。舗装工事などで蓋だけが更新(交換)されても番号はそのままということもよくあります。ただ、最近は古くなった下水道管の更新工事も増えているので、工事を境に4つ目の色が黄色から青色に変わったり、同じ青色でも工事した年の数字が入ることが増えていくことでしょう。同時に蓋のデザインが新しいものに変わることもあるので、工事の後はぜひ蓋の変化にも注目してみてくださいね。

写真:23区マンホール蓋の一例。

【写真A】23区マンホール蓋の一例。

人孔番号が入っているのは、平成13年(2001年)採用の蓋から

  • 人孔=マンホール
  • 設置年度:工事の関係上ずれる場合があります。

写真:人孔番号の一例。

【写真B】人孔番号の一例。

傭兵鉄子(ようへい・てつこ)

マンホール蓋&腐食金属愛好家。愛好家主催のイベント『マンホールナイト』実行委員。学生時代「自分の街をプロデュースする」という課題がきっかけで市町村毎に違う絵柄の鉄蓋に気付き、以来その魅力にハマる。アニメに登場する蓋も研究観察対象。

記事ID:082-001-20241107-009787