下水道管の再構築
1. 東京の下水道の管理
東京の下水道事業は、明治17年の神田下水の整備に始まり、140年以上の歩みを重ねて今日に至っています。区部では、平成6年度末には下水道の普及率が概ね100%に達成し、現在では約16,200kmにも及ぶ膨大な延長の下水道管を管理しています。これらの下水道管は、歴史が長い分、老朽化が進んでいるものもあります。当然ながら、老朽化した下水道管をそのまま放置すれば、下水道の機能に支障をきたすだけでなく道路陥没の原因となり、交通障害などの都市活動に影響を及ぼすことになってしまいます。
そのため下水道局では、日頃からの巡視や下水道管の内部をテレビカメラ等により確認し、状態に応じた補修を実施するとともに、施設リニューアルとあわせ、雨水排除能力の増強や耐震性の向上などを図る再構築を計画的に進めています。
下水道管の調査
ロボットカメラを用いた管路内調査 作業員の目視による下水道管の調査
2. 老朽化した下水道管の再構築
下水道管には、家庭等からの排水を受け入れる「枝線」と呼ばれる比較的小さな下水道管と枝線の下水を集め水再生センターに送る大規模な「幹線」と呼ばれる下水道管があります。
枝線の再構築については、ライフサイクルコストや中長期的な事業の平準化などを勘案しつつ、アセットマネジメントの手法を活用し、計画的かつ効率的に事業を進めています。事業の実施に当たっては、区部を整備年代により三つのエリアに分け、最も古い都心部の処理区を第一期再構築エリアとして優先的に再構築を進めています。
幹線の再構築については、整備年代の古い幹線や調査に基づき対策が必要な幹線等の再構築を優先して進めています。
枝線再構築エリアと平均経過年数
下水道管のアセットマネジメントのイメージ
3. 下水道管の再構築工事の方法
工事に当たっては、道路交通や生活への影響を最小限に抑える必要があります。また下水道管には24時間365日下水が流れており、一時も止められません。このため下水道局では、道路を掘らずに下水を流したまま下水道管を内側からリニューアルする更生工法を活用し、再構築を進めています。
更生工法の一つであるSPR工法は、下水道局と民間事業者が共同で開発、改良を重ねてきた技術で、円形や四角形など様々な断面形状の下水道管に対応できるとともに、25cmの小規模な枝線から5mの大規模な幹線まで幅広く対応することができます。また、ある程度の水量であれば下水を流したまま施工することが可能であり、多くの再構築工事で採用しています。
更生工法による再構築の事例(市ヶ谷幹線)
大断面下水道幹線の再構築事例(烏山幹線[既設管径4m×4m])
4. 下水道管の再構築の効果
普及率100%達成直後の平成7年度から下水道管の再構築に着手し、令和5年度末までに第一期再構築エリアの面積の約8割が完了した結果、第一期エリアの道路陥没件数が約9割減少しました。
第一期再構築エリアの道路陥没件数の推移
5. 幹線再構築を進めていく上での工夫(代替幹線の整備)
下水道幹線の中には、再構築が困難なほど水位が高い幹線もあります。このため、このような水位が高い幹線の下水の流れをバイパスさせる代替幹線を先行して整備した後に、既存幹線の再構築を進めることにしています。なお、こうした代替幹線の一部は、既存下水道のバックアップ機能も有することもでき、現在では5幹線で代替幹線の整備を進めています。
代替幹線の役割
(代替幹線の整備事例:千代田幹線整備事業)
https://www.chiyodakansen-gesui.tokyo.jp/
東京下水道再構築