りん資源化に向けた取組

【取組の背景】

東京都下水道局では、東京湾の赤潮発生要因の一つとされる下水処理水に含まれる窒素・りんの一層の削減に向けて、高度処理施設や準高度処理等の導入を進めています。経営計画2021の中では、水再生センターの課題に合わせた対策として、りん負荷の大きい砂町水再生センターにおいて、汚泥処理返流水中の多量のりんを除去する施設の導入を掲げています。また、副次的に得られたりんは、農業用肥料など資源への有効利用を検討する、としています。

一方、令和4年9月に開催された「食料安定供給・農林水産業基盤強化本部」において、政府は食料品の物価高騰に緊急に対応していくため、下水汚泥等の未利用資源の利用拡大により、肥料の国産化・安定供給を回ることに言及しました。それを受けて、令和4年12月に策定された「食料安全保障強化政策大綱」では、2030年までに、堆肥・下水汚泥資源の肥料としての使用量を倍増し、肥料の使用量(リンベース)に占める国内資源の利用割合を40%まで拡大する目標が設定されました。

このような背景を踏まえ、令和5年3月に国土交通省は、「発生汚泥等の処理を行うに当たっては、肥料としての利用を最優先し、最大限の利用を行うこととする。」といった基本的な考え方を示しています。

【取組方針】

当局では、国土交通省の事業である下水道革新的技術実証事業 -B-DASHプロジェクト-を活用し、下水汚泥中のりんを効率的に回収し、肥料利用する技術の実用化に向けた取組を開始しました(図参照)。令和6年1月には、砂町水再生センター内の東部スラッジプラントにおいて、りん回収・肥料化施設が稼働し、肥料原料となる下水再生りんの生産を開始しています。現在は、りん回収率などのデータから運転の適正化を検討するとともに、下水再生りんの肥料としての品質確認を行っています。

画像:B-DASHの取組
DASHの取組

加えて、令和5年12月には、小池都知事が出席のもと、JA全農と連携協定を締結しました。東京都は全国の下水処理量の約1割を占め、りんを含有する多量の下水汚泥が発生しており、JA全農は肥料製品の広域的な流通を担っています。本協定の締結により、両者が下記について連携し、下水汚泥から回収した下水再生りんの広域での肥料利用を促進します。

  1. 下水汚泥に含まれる肥料資源の調査・技術開発に関すること
  2. 肥料の製品開発、試験栽培に関すること
  3. 肥料の市場・流通調査に関すること
  4. 下水汚泥に含まれる肥料資源にかかる関係者の理解醸成及び利用促進に関すること

画像:JA全農との協定締結式

JA全農との協定締結式

今後は、試験栽培やイベントなどの肥料配布などを通じ、農業関係者への理解醸成などに取り組み、下水再生りんの広域利用を実現していきます。

記事ID:082-001-20241107-009786