第1回 下水道の未来を切り拓く技術開発

多機能型マンホール蓋~下水道管内を見える化~

「多機能型マンホール蓋」は、インターネットを介して、下水道管内の水位や硫化水素濃度などのデータをリアルタイムに取得できる技術です。
これらのデータをリアルタイムに得るためには、マンホールの中に設置する計測センサーとそのデータを送信するための伝送装置、これらに必要な電源・通信ケーブルの埋設、その引込み電柱等の設置が必要です。さらに、電柱の設置用地の確保または借用、ケーブルを引くために道路を掘らなければなりません。それには、他の埋設企業者との調整など、時間と費用を要することになります。
そこで、通信ケーブルを用いず、携帯電話の回線を利用する特殊なマンホールの蓋(写真-1,2及び図-1)を、東京都下水道サービス株式会社、株式会社明電舎、日之出水道機器株式会社と共同で開発しました。

写真-1 蓋の表面

写真-2 蓋の裏面

図-1 多機能蓋を使ったリアルタイム送受信のイメージ

なお、当初想定した水位情報や硫化水素濃度以外にも、センサーさえ準備できれば、水質情報など様々な情報を取得できることから「多機能型マンホール蓋」と名付けました。

特徴

  1. 水位計で1 分毎に計測したデータを10 分毎にまとめて送信する場合、バッテリーは1年間以上、交換が不要です。
  2. 東京都標準のマンホール蓋(直径60cm)であれば、既存の蓋と交換するだけで、特殊な工事も不要です。
  3. 豪雨発生時に蓋が水没(水深40cm 程度まで)しても、通信できます。
  4. パソコンの画面をずっと見ていなくても、計測値が基準以上になったら、指定したメールアドレスへ送信されます。
  5. 計測したデータは、過去のデータでも事務所等に設置したパソコンで受け取れます。

このようにして、多機能型マンホール蓋から送られた測定データにより、降雨状況と下水道管内の水位上昇の傾向や、下水道管内における硫化水素の発生状況を、現場から離れた事務所等において把握し、浸水対策や悪臭問題などの解決に役立てることができます。

利用状況

現在、「多機能型マンホール蓋」は、市町村の効率的な雨天時浸入水対策※を促進することを目的に多摩地域に設置されています(写真-3)。特殊なマンホール蓋ではありますが、ほかのマンホールと同様、街中の風景に溶け込みながら、24 時間365 日、水位データを取得しています。 ふと気が付くと、みなさんの足元に設置されているかもしれません。

写真-3 多機能型マンホール蓋の設置状況

※ 雨天時浸入水とは?
生活排水などを流す汚水管(分流式下水道)に浸入する雨水等のことです。汚水管のつなぎ目やひび割れから雨水や地下水が入ってくるほか、雨水管が誤って汚水管に接続されていることが原因となります。

記事ID:082-001-20240927-009117