第29回 鉄蓋大好き!

マンホール蓋散歩で水と親しむ

傭兵鉄子 TETSUKO YOHEI

新年度が始まって早2 ヶ月。仕事や学業などで東京都に越してきた方も多いのではないでしょうか。自然が少ない印象がある都内にも、緑豊かな場所はたくさんあります。中でも四季折々の風景を楽しめる公園は、都民の身近な憩いの場です。遊具や広場がある公園だけでなく、河川を利用した親水公園も数多くあり、水遊びのほか、水上アスレチックや釣り、カヌーやボート、稲作体験ができる所もあります。
親水公園は日本全国にありますが、その始まりは1973 年に開園した東京都江戸川区の「古川親水公園」でした。従来の河川の機能は治水や利水といった「流水」ですが、そこに「親水」機能を持たせて誕生したのが親水公園です。景観、自然環境保全、レクリエーション、気候調整、心理的満足といった親水機能を応用し、急速な都市化で汚れた河川を綺麗にして地域の憩いの場にしたい。そんな思いで造られた親水公園は、デッキやベンチ、木陰の散歩道や噴水などがある夏場でも過ごしやすい空間です。また、小さな河川に親水機能を持たせた緑道もあります。そうした親水公園や緑道は、憩いの場や日常の通路であると同時に、災害時の消防水利、延焼遮断帯、生活用水やトイレ用水などの水源、避難場所としての役割も担っています。
数ある親水公園や緑道の中には、そこでしか見られないデザインマンホール蓋が設置されている所もあります。川で遊ぶ子どもたちや田園風景、ホタルやメダカなどをデザインした蓋から、かつての景色や清流復活への思いが伝わってきます。これからの暑い季節、水と親しみながら巡るマンホール蓋散歩はいかがでしょうか。

東京都江戸川区の小松川境川親水公園とデザインマンホール蓋。橋を背に子どもたちが川で遊ぶ様子がデザインされている。

 

東京都足立区と葛飾区の共同事業で整備された古隅田川緑道のデザインマンホール蓋は、カエルやトンボがいる。田園風景と川を泳ぐ魚の2種類。両デザインとも、漢字とひらがなの2通りの文字表記がある(写真は漢字ver.)。

東京都世田谷区の北沢川緑道のデザインマンホール蓋。ホタルとメダカがデザインされている。

傭兵鉄子(ようへい・てつこ)

マンホール蓋&腐食金属愛好家。愛好家主催のイベント『マンホールナイト』実行委員。学生時代「自分の街をプロデュースする」という課題がきっかけで市町村毎に違う絵柄の鉄蓋に気付き、以来その魅力にハマる。アニメに登場する蓋も研究観察対象。

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