第40回 鉄蓋大好き!

姿を消したデザインマンホール蓋

傭兵鉄子 TETSUKO YOHEI

道を歩けば必ず足元にあるマンホール蓋。市区町村ごとに趣向を凝らしたデザインマンホール蓋には、特産品や観光名所といった「まちのイチ押し」が描かれています。数年前からは、アニメや漫画、ご当地キャラクターの絵が描かれた蓋もたくさん誕生し、デザインマンホール蓋の種類も増えています。でもその一方で、ひっそりと姿を消していく蓋もあります。

マンホール蓋が更新(交換)される理由はいろいろありますが、蓋の更新は安全対策のために不可欠な工事です。戦前に作られた古い「骨董蓋」だけでなく、デザインマンホール蓋も必要に応じて更新されたり、再開発などで撤去されることもあります。また、デザインを新しくしたり、市町村合併で新しいデザインの蓋が作られると、旧デザインの蓋は工事のタイミングで徐々にその姿を消していきます。

ここ数年の間に都内で撤去された蓋の一例に、千代田区の日比谷シャンテ(東宝日比谷ビル)に設置されていた蛙のデザインマンホール蓋があります。1987年(昭和62年)の日比谷シャンテ開業時に設置された蓋で、下水道管と思われる中に蛙と水面が描かれています。もしかして「蛙=帰る」で、下水道を通じて綺麗になった水が帰ってくるというメッセージになっているのかな?と想像をかき立てられるデザインです。その周りにある『SEWERAGE in TOKYO…11,766,000m…TOKYO to MAIAMI 1987』の文字は、蓋が設置された1987年当時の東京23区の下水道管の長さ(11,766km)が、東京からマイアミまでの距離に相当することを記しています。日比谷シャンテの「合歓(ねむ)の広場」でゴジラ像と共に親しまれてきた蓋は、ここにしか無いデザインマンホール蓋であると同時に、設置年と下水道管の長さが入っているとても珍しい蓋でした。日比谷シャンテ一帯のリニューアルエ事に伴い、残念ながら工事期間中の2016年(平成28年)3月末頃に撤去され、今はもう見ることができません。

現在の23区の下水道管の長さは約16,000kmで、東京とシドニーを往復した距離と同じだそうです。蛙のデザインマンホール蓋の設置から約40年の間に、4,000km以上も延びたのですね!いつかまた、新たな数字が入ったデザインマンホール蓋が作られることを楽しみにしています。

1987年~2016年3月末まで日比谷シャンテ「合歓の広場(現・ゴジラスクエア)」に設置されていた、蛙のデザインマンホール蓋

傭兵鉄子(ようへい・てつこ)

マンホール蓋&腐食金属愛好家。愛好家主催のイベント『マンホールナイト』実行委員。学生時代「自分の街をプロデュースする」という課題がきっかけで市町村毎に違う絵柄の鉄蓋に気付き、以来その魅力にハマる。アニメに登場する蓋も研究観察対象。

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