第1回 先人たちが残した東京下水道の形跡

~歴史的・文化的資産の紹介~

1 はじめに

赤煉瓦(煉瓦タイル)で親しまれている旧三河島汚水処分場喞筒場施設は、 平成19年12月4日に国の重要文化財(建造物)に指定されております。

関東大震災及び第二次世界大戦にも耐え抜いた建造物は、令和4年に100周年を迎えました。

東京都下水道サービス株式会社(以下、「TGS」)では、平成19年度から下水道の歴史的・文化的資産と思われる古図面、古書資料や設備機器、人孔鉄蓋等の収集を行い調査・分析を行っております。

調査保存した総数は3,979件で、その内訳は設計図書1,939件、設備・器具等については844件その他を調査保存しています。

今回は調査報告書の内容の一端を四回に渡り連載いたします。

第一回目は設計図面の変遷と清掃器具について紹介いたします。

2 設計図の変遷

大正から昭和一桁台の設計う面を調査すると和紙に綺麗に墨入れされた図面が数多く確認されました。(写真-1)

しかし、和紙の一部には劣化が進み変色、皺による変形等が見られます。また、折られた図面からは埃と虫が混入しておりました。

このことから、調査報告書は、中性紙・中性紙保存箱に格納し成果品として提出しております。

一方、土木・建築の設計図の寸法は尺貫法で表記され、設備図面ではインチやフィートで表記されています。図面は詳細に書かれており職員の技術の高さが窺えます。

まだ、喞筒設備の設計図面の名称や仕様は、英文で表記されています。当時の東京市技師は東京帝国大学の出身者で占められていたことやヨーロッパの影響が大きいかったものと思われます。

設計図の紙質は、時代の変遷とともに和紙から青図、白焼き、ポリエステル、トレーシングペーパーに変化しています。

また、昭和30年代から40年代に掛けては油紙の図面が確認されています。

写真:業平橋喞筒場止門扉装置工事設計図 大正10年

業平橋喞筒場止門扉装置工事設計図
大正10年(出展:下水道局 写真-1)

3 清掃器具について

設備・器具類(人孔蓋、管きょ工事器具類等)を三河島水再生センター内のアーカイブス事業所で展示しています。

この展示の中から管きょ清掃作業で使用された掴揚式浚渫器(かくようしきしゅんせつき)を紹介します。

(写真-2)

この浚渫器は、歩道や道路幅員が狭い場所に適用し、人孔内に堆積した土砂を路上から人力でつかみ取る簡易的な器具です。

現在は高圧洗浄車及び揚泥車・吸引車のセットで行われるようになりましたが、当時は直営で浚渫作業を行っていました。

この浚渫器は重く運搬や人孔内への投入、そして土砂の引き上げに職員は汗水を流したことと思います。

写真:掴揚式浚渫器 年代不明

掴揚式浚渫器 年代不明
(出展:下水道局 写真-2)

4 下水道の歴史的・文化的資産の活用

TGSでは、先人たちが築いてきた大切な歴史・文化的資料を後世に継承していくために、今後も調査を行い下水道の歴史や文化を伝えていくことをコンセプトに活動を続けてまいります。

(次回へとつづく)

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