第37回 鉄蓋大好き!

マンホール蓋の親子って?

傭兵鉄子 TETSUKO YOHEI

マンホール蓋の基本サイズは直径約60cmですが、それよりも大きい蓋や小さい蓋など、マンホール蓋のサイズは用途によってさまざまです。中には「親子蓋」と呼ばれる少し変わった蓋もあり、初めて親子蓋という言葉を聞いた時は、「親子の蓋ってなんだろう。設置された場所の繋がりで蓋にも親子関係があるのかな?」と不思議に思いました。

親子蓋の「親子」は、もちろん血縁関係の親子のことではありません。親子蓋とは、用途が違う大小の蓋を組み合わせた蓋のことで、大きい蓋の中に小さい蓋が配置された構造になっています。大きい方を「親蓋」、小さい方を「子蓋」と言い、用途別にそれぞれ独立して開けることができる親子蓋は、1枚で2つの役割を果たしています。

下水道だけでなく他のインフラの蓋にも親子蓋はありますが、下水道では、直径約90cm~150cmの親蓋と60cmの蓋が子蓋になっている組み合わせが代表的です(写真A)。親蓋は下水管路の点検や修繕に使う機械の出し入れの時に、子蓋は人が出入りする時に使われます。よく見ると、子蓋が親蓋の中央ではなく片側に寄っていますが、これは下水管路に下りる時、マンホール(人孔)に設置されたはしごにすぐ手足が届くように、はしごがある側面から出入りしやすくするための工夫です。

また、 災害時にトイレとして使用できる「災害用トイレ」の蓋にも親子蓋があります(写真B)。災害用トイレとは、下水管路に繋がったマンホールの上に簡易トイレを設置して、災害時にトイレとして使えるようにしたものです。災害用トイレの親子蓋は、親蓋である60cm蓋の中央に子蓋があります。子蓋を開けた上に簡易トイレを設置するので、使用時に人が孔に落ちる心配もありません。

大きな親子蓋は大通りの車道に、災害用トイレの親子蓋は公園や学校など、避難場所に指定された所に設置されています。皆さんもぜひ「マンホール蓋の親子」を探してみてください。

写真A:親子蓋の例その1

【写真A:親子蓋の例その1】

直径約90cmの親蓋と約60cmの子蓋の組み合わせ

写真B:親子蓋の例その2

【写真B:親子蓋の例その2】

災害用トイレの蓋。子蓋の形や大きさは製造会社によってさまざま

傭兵鉄子(ようへい・てつこ)

マンホール蓋&腐食金属愛好家。愛好家主催のイベント『マンホールナイト』実行委員。学生時代「自分の街をプロデュースする」という課題がきっかけで市町村毎に違う絵柄の鉄蓋に気付き、以来その魅力にハマる。アニメに登場する蓋も研究観察対象。

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