第31回 鉄蓋大好き!

かつての技術を今に伝える蓋

傭兵鉄子 TETSUKO YOHEI

マンホール蓋は、下水管路の点検作業などで人が出入りする時に使う孔(マンホール)の蓋です。基本サイズは直径約60cm ですが、用途によってサイズも変わり、約90~120cmの蓋は人だけでなく大きな機械も入れられます。逆に人が出入りできないくらい小さい蓋もあります。

下の写真は直径約30cm以下の小さい蓋の一例ですが、一つだけ用途が違う珍しい蓋があります。さて、それはA、B、Cのどれでしょうか。

写真:マンホール画像

答えはCです。AとBは小型汚水桝の蓋で、生活排水を集めて下水道本管に流し込む設備の蓋です。Cは燈孔(とうこう)の蓋です。

燈孔とは、下水管路の点検時に地上からランプを吊り下げて管内を照らすための孔で、ランプホールとも呼ばれます。そのほとんどが戦前(大正~昭和初期)に設置されたもので、マンホールの中間で下水管が曲がる所や勾配が変わる所、マンホールを特に必要としない所、下水管内への通気を必要とする所などに設置されました。懐中電灯がある現代では燈孔はその役目を終え、路上に残る数もわずかです。その貴重さもさることながら、危険を伴う暗い場所での作業の様子を想像すると、下水道の維持管理に携わる方々に対して今以上に頭が下がります。

かつての技術を今に伝える燈孔蓋。それを下水道の文化的資産候補として展示保存している場所があります。三河島水再生センターにある旧三河島汚水処分場喞筒(ポンプ)場施設(運転開始から今年100周年を迎えた国の重要文化財)には、燈孔蓋をはじめ貴重な蓋が展示されています。見学には予約が必要ですが、イベント開催時はどなたでも入れます。蓋は事務棟入り口を入ってすぐの場所に展示されているので、訪れた際にはぜひ足を運んでみてください。

写真:資料として展示されている燈孔蓋の一例

資料として展示されている燈孔蓋の一例
(旧三河島汚水処分場喞筒場施設)
※蔵前水の館にも展示蓋があります

写真:路上に残る燈孔蓋の一例 (東京都港区)

路上に残る燈孔蓋の一例 (東京都港区)

傭兵鉄子(ようへい・てつこ)

マンホール蓋&腐食金属愛好家。愛好家主催のイベント『マンホールナイト』実行委員。学生時代「自分の街をプロデュースする」という課題がきっかけで市町村毎に違う絵柄の鉄蓋に気付き、以来その魅力にハマる。アニメに登場する蓋も研究観察対象

記事ID:082-001-20240927-008639