既存のビルピットでの臭気対策

既存のビルピットでの臭気対策は、まず現状の「硫化水素濃度測定」を実施し、硫化水素濃度が指針値を超えているようであれば、何らかの対策を施します。
対策後に、再度「硫化水素濃度測定」を実施し、硫化水素濃度が指針値を下回るまで、対策と測定を繰り返していきます。

1.「硫化水素濃度測定」の方法

臭気は、排水ポンプが作動した時にしか測定することができません。
そのため、排水ポンプがいつ動くかは排水の溜まり方次第となってしまうため、連続測定器を使用しない場合は、排水ポンプを手動運転させて測定することになります。
主な測定の方法は以下のとおりです。 詳細についてはビルピット臭気対策マニュアル(東京都環境局ホームページ)をご覧ください。

調査方法 I II III
測定手法 測定器なし ガス検知器 短時間用
検知管
長時間用
検知管
連続測定器
測定方法 鼻で臭いをかぐ センサー部を測定対象箇所に投入 気体採取器に取り付け、測定対象箇所の空気を吸引 私設ますに設置 私設ますに設置
測定可能期間 その時点 常時 1分間の平均 48時間積算(仕様による) 最長30日間
ビルピット対策上の精度 悪臭の有無の検知は確実だが、数値は不明
費用 なし
長所 器具を必要としない 測定値をリアルタイムで把握可能 容易に実施できる 容易に実施できる 1分毎の測定値をグラフ表示できる
短所 数値が分からないので、対策実施前後の比較ができない 一般に作業環境の安全確保に用いられるもので、最大測定濃度が100ppm程度と低く、高濃度に暴露するとセンサーの寿命が短くなる等のおそれあり 排水ポンプの運転中の数値を測る場合、ポンプの運転開始から停止までのどのタイミングで測定するかによって数値が異なることも考えられる 測定期間中に排水ポンプが稼働しない場合は測定できない。
測定期間の積算値が計測されるため、発生濃度及び時間的推移を把握することは不可能。
定期的に測定器の校正を要する。校正頻度は使用条件・目的にもよるが、1か月~半年に1回程度。
また、センサー交換が年に1回程度必要。
注意事項   ますを開けて測る場合は、ビニールなどをかぶせて気体が拡散しないようにする ますを開けて測る場合は、ビニールなどをかぶせて気体が拡散しないようにする 濃度の測定用ではなく、測定期間中の臭気の有無の確認程度に使用。  

2.対策のメニュー

対策のメニューは以下のとおりです。
詳細についてはビルピット臭気対策マニュアル(東京都環境局ホームページ)をご覧ください。

一般的・比較的簡易なもの・・・設備面で可能な範囲で試行を繰り返す

メニュー 具体的な方法
低水位運転 停止水位
(Lレベル)
排水ポンプの停止水位を、ポンプの運転可能なぎりぎりの低水位まで下げる(レベル計の位置を変更)
コスト:排水槽の清掃と同時に行えばほとんどかからない
始動水位
(Hレベル)
排水ポンプの始動水位を下げる(レベル計の位置を変更)
コスト:排水槽の清掃と同時に行えばほとんどかからない
タイマー併用運転 排水ポンプの運転を水位・タイマー併用方式とし、2時間以内ごとに排水するように設定(タイマーの設定変更または新設)
コスト:タイマー新設の場合は、数万~十数万円程度かかる

一般的・費用や工期を要するもの・・・ランニングコストも考慮し実施する

メニュー 具体的な方法
ばっ気・撹拌併設装置の設置 槽内をばっ気・撹拌する装置を設置
コスト:設置に、数十万~数百万円程度かかる

※比較的特殊なもの・・・ビルピットの条件によっては、導入のメリットがある

メニュー 具体的な方法
槽の縮小 槽全体の縮小 槽の容量が過大な場合、仕切り壁を設けるなどして容量を減らす。連結槽の場合は連結口を閉止する。
コスト:規模により異なるが、十数万~数百万円程度かかる
釜場の適正化 釜場(吸い込みピット)が無い、広すぎる、浅すぎるなどの場合は、適正な釜場に改造する
コスト:規模により異なるが、十数万~数百万円程度かかる
即時排水型
ビルピット
「即時排水型ビルピット設備」を設置
コスト:設置に、数百万円~かかる
排水の希釈 湧水、再生水などを排水槽に入れて希釈するとともに、ポンプの動作間隔を短くする
コスト:安価で利用できる水源(湧水、再生水)がある場合には検討の価値がある
薬剤投入 ビルピットなどに薬剤を投入して硫化水素を分解
コスト:実施事例少なく、詳細は不明
記事ID:082-001-20240927-008331