新規にビルピットを設置する場合の臭気対策

2004年4月に下水道法施行令の一部が改正施行され、排水設備の技術上の基準として「汚水を一時的に貯留する排水設備には、臭気の発散により生活環境の保全上支障が生じないようにするための措置が講ぜられていること」が規定されています。
具体的な措置の考え方は次の3点となります。

  1. 汚水が腐敗する前に排出する
  2. 汚水の滞留量を減らす
  3. 酸素を供給する

これらの具体的な方法について、以下に記します。
なお、詳細についてはビルピット臭気対策マニュアル(東京都環境局ホームページ)をご覧ください。

措置の内容 具体的な方法 備考
(1)汚水が腐敗する前に排出する ①有効容量の適正化 排水槽の有効容量を、次式によって求められる量とする。
V=(B/A×2.0~2.5)
V:ビルピットの有効容量(m3
A:建築物への地階部分(当該ビルピットに排水を流入させている部分に限る。)への一日当りの給水時間(h)
B:当該ビルピットに流入する一日平均排水量(m3
 
②低水位(始動水位) 排水ポンプの作動間隔を短くするために、始動水位を極力(可能であれば、吸い込みピット(釜場)内まで)下げる。
低水位(始動水位)
※ ③のタイマー併設運転をするのであれば下げる必要はない。
③水位・タイマー併設運転 排水ポンプ作動の制御を、水位計だけではなくタイマーを併設して行うようにする。
具体的には、排水ポンプの始動水位以下であっても、滞留時間が2時間を超える場合は排水ポンプが起動するように制御する(おおむね2時間以上経過すると、腐敗が進行して臭気が強くなるため)。
※ 排水ポンプが空運転しないような制御も組み込む。
措置の内容 具体的な方法 備考
(2)汚水の滞留量を減らす ④吸い込みピット(釜場)の適正化
  • 排水ポンプと釜場側面の間隔を出来るだけ小さく(200mm程度)
  • ポンプの始動・停止水位が釜場内に収まる
吸い込みピット(釜場)の適正化
※ ばっ気・撹拌併設装置を設置の場合はこの限りではない。
⑤低水位(停止水位) ポンプの停止水位は、ポンプの取扱説明書で定められた運転可能水位まで下げる。
低水位(停止水位)
※ ポンプは、運転可能水位ができるだけ低いものを選定し、可能な範囲で低く設置する。

※ ポンプの空運転に注意のこと。
措置の内容 具体的な方法 備考
(3)酸素を供給する ⑥ばっ気・撹拌併設装置を設置 酸素が豊富な排水槽内では、汚水を腐敗させて硫化水素を発生させる菌の活動が弱まる。こうしたことから、ばっ気・撹拌併設装置を設置し、汚水に酸素を供給することで、悪臭を抑制することができる。
なお、ばっ気・撹拌併設装置とは、ばっ気装置と撹拌装置の両方または、双方の機能を備えた機器を設置するということである。ばっ気だけでなく撹拌も行うことで、酸素が汚水中に行き渡る。
ばっ気・撹拌併設装置を設置
※ ばっ気・撹拌併設装置を設置する場合には、槽の構造は、①から⑤に係わらず、機器の性能が発揮できるようなものとする。

※ 機器によっては副次的効果として、スカムや汚泥の量を低減できる効果を持つ機器もあり、清掃・廃棄物処理コストの低減も期待できる。
記事ID:082-001-20240927-008330