ページの先頭です

ここから本文です。

第7回 下水道の未来を切り拓く技術開発

AIを用いた微生物の判別技術の開発
~安定した下水処理のために~

水再生センターでは、微生物の働きを利用して下水中の汚濁物を分解・沈殿させた後、消毒処理し、きれいな水にして川や海へ放流しています。この処理は、特定の微生物が汚濁物を分解・沈殿させている訳ではなく、クマムシ、アメーバなど多数の微生物たちの食物連鎖のような仕組みによって成り立っています。微生物の種類やバランスが崩れてくると、下水処理に悪影響を及ぼす細菌類が増えます。特に、これからの冬の時期には注意が必要になります。中でも放線菌という細菌は、異常発生すると写真2のように激しく泡を発生させ、その泡が処理槽から流出し、安全衛生面や処理水質に悪影響を及ぼします。そのため、日々の運転管理の一つとして微生物の状態を顕微鏡で観察し、それぞれ状況に合わせた運転対応を行っています。

放線菌のような下水処理に悪影響を与える細菌類を、より迅速かつ正確に測定することができれば、早い段階で増殖の予兆をつかみ対応することが可能になります。東京都下水道局では、AIによる画像解析技術を活用し、迅速な測定を可能とする技術を開発したので紹介します。

写真1:放線菌(左)、クマムシ(右上)、アメーバ(右下)

写真1:放線菌(左)、クマムシ(右上)、アメーバ(右下)

写真2:放線菌が異常発生し、処理槽から泡が流出した状況

写真2:放線菌が異常発生し、処理槽から泡が流出した状況

写真3は放線菌を含めた微生物の顕微鏡画像です。放線菌を赤丸で囲っていますが、赤丸がなければ、放線菌の判別が非常に難しいことがわかると思います。そこで微生物を専門とする職員が放線菌に色をつけ(写真4:黄色の部分)、「これが放線菌である」とAIに学習させるデータ(教師画像)を作成しました。このような教師画像を約500パターン作成し、顕微鏡画像の中から放線菌を判別できるようになるまで学習させました。

写真3:元画像

写真3:元画像

写真4:教師画像

写真4:教師画像

※教師画像:AIが学習するための教材で、正解を学ばせる画像

AIが学習した成果を、教師画像とは別の顕微鏡画像(写真5:赤丸で囲った部分が放線菌)でテストしたところ、見事に放線菌を判別することに成功しました(写真6:黄色の箇所をAIが放線菌であると判定)。

写真5:検証画像

写真5:検証画像

写真6:AIによる判別画像

写真6:AIによる判別画像

放線菌が多く発生していた水再生センターでは、このAIを用いた微生物の判別技術によって迅速に増殖の予兆をつかみ、的確な運転対応を行うことができるようになりました。なお、この開発した技術は令和4年度の東京都職員表彰で『新しい東京賞』を受賞し、都知事から直接表彰状を授与されました。

本文ここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

サイトのご利用案内ここまでです。