ページの先頭です

ここから本文です。

第32回 鉄蓋大好き!

マンホール蓋は〝路上の橋〞

傭兵鉄子 TETSUKO YOHEI

マンホールの上はダンスホール、マンホールの上はダンスホール

軽快な歌とリズムに乗ってマンホール蓋の上で踊る動画がTikTok で流れたのは、今から2年前(2021年)のことでした。ピン芸人・もりせいじゅさんが2019年にYouTubeに投稿した動画が元になっていて、道を歩いている人がマンホール蓋の上で突然踊りだし、一通り踊ると何事もなかったようにまた歩き出すという内容です。こうした動画は一般の人だけでなく、芸能人も楽しむコンテンツとして一時期盛り上がりました。

マンホール蓋をダンスホールに見立てた発想もユニークですが、それ以上に、この動画を考えた芸人さんもそれをやってみた人たちも、何も躊躇せず蓋の上で飛んだり跳ねたりしていることに驚きました。

そんなの当たり前でしょ? と思われるかもしれませんが、マンホール蓋に乗っても壊れないという感覚が日常ではない国もあります。知り合いの帰国子女の方は「危ないからマンホールに乗ったらダメ」と小さい頃から親に言われて育ったそうです。日本でも昔はそういった認識もあったようですが、今はマンホール蓋を意識せずに通行している人がほとんどだと思います。そうした日常は、さまざまな苦労や技術の進歩によって支えられています。

昔と比べ、路上の交通量は増え車両も大きく重くなりました。その影響でマンホール蓋のがたつきや破損、摩耗によるスリップ、段差の発生も起きやすくなりました。急な大雨で管路内の圧が上がって、管路が破損したり蓋が外れたりしたら大事故にもつながります。そうした危険な状態にならないよう、下水道やマンホール蓋の安全には日々の点検や修繕が欠かせません。またマンホール蓋は、大型車両の重さや車両が通る時のたわみにも耐えられるように、橋の設計に基づいた強度や安全性を考えて設計され、「路上に架る小さな橋」とも呼ばれています。

技術の進歩は蓋表面の工夫にも見られ、スリップ防止の細かい突起が全面に施された、次世代型の耐スリップタイプの蓋も多くなりました。最近私はバイクに乗る機会が増えたのですが、耐スリップ蓋は従来の物よりも滑りにくく、カーブを曲がる時に蓋の上に乗ってしまってもひやっとすることが少なくなりました。現在車道に設置されている蓋は、順次耐スリップ蓋に置き換わっていくそうなので、近い将来、ライダーがマンホール蓋を意識せず走れる時代がくることを期待しています。

写真:蓋の裏側の形状(一例)

蓋の裏側の形状(一例)。
橋の設計に基づいた工夫が施されている

写真:耐スリップタイプの東京都23区のデザインマンホール蓋

耐スリップタイプの
東京都23区のデザインマンホール蓋

傭兵鉄子(ようへい・てつこ)

マンホール蓋&腐食金属愛好家。愛好家主催のイベント『マンホールナイト』実行委員。学生時代「自分の街をプロデュースする」という課題がきっかけで市町村毎に違う絵柄の鉄蓋に気付き、以来その魅力にハマる。アニメに登場する蓋も研究観察対象。

本文ここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

サイトのご利用案内ここまでです。